酸素濃度測定
酸素とは。酸素と酸素計の測定原理を簡単に解説, MIL22-02
目次
酸素とは。酸素と酸素計の測定原理を簡単に解説, MIL22-02
「酸素」(さんそ/Oxygen)とは、何でしょうか?
興味がない方は 「私たちに周りに存在している空気(大気)!ないと生命活動が危険だよね」 でしょうか?
専門的な方は 「酸素はO2でしょ。爆発の原因になったりして、管理が大変なんだ。」 でしょうか?
浪漫あふれる方なら 「宇宙には酸素ないのに宇宙戦争アニメで爆発があるのは何で?」 でしょうか?
バイク愛好家なら 「山の上にいくとエンジンかかりにくいんだよね。」 でしょうか?
バイク好きの私は、酸素といえば「標高高いとこはエンジンの始動性が悪いな」や「カーボン詰まったかな?プラグかな?」という印象です、あまり皆様の共感は得られなそうですね。
少し脱線しましたが、今回は「酸素とは簡単になに?」と「代表的な酸素測定原理」についてご紹介します。
酸素とは?
一般的に「酸素」としての言葉の意味は2種類あり、元素としての酸素は「O」、物質(分子)としての酸素は「O2」です。
酸素は、無味無臭の気体で空気中に約21%含まれています。生物の呼吸や、燃焼に不可欠で、ほとんどの元素と化合して酸化物を形成するなど、化学的に活発な元素です。
酸素は、医療分野では吸入用酸素や室内空気品質管理、工業分野では水素やアセチレンと組み合わせた酸素アセチレン炎として金属の溶接切断用途や、工業熱処理プロセス(酸化防止)、工業炉の燃焼工程(燃焼効率や酸化還元プロセス)、製鉄所では不純物除去のために使用されます。
はい、私には難しいです。
それぞれコンパクトに2行で簡潔に表現してみました。
酸素とは
● 酸素という元素(原子1個)の「O」
● 酸素ボンベなどに入っている分子の「O2」
酸素の特長
● 無味無臭の気体
● 活発な元素であり、多くの元素と化合して酸化(燃焼)する
酸素を使用する
● 生物の呼吸
● 燃やす(燃焼活動)
詳しい酸素(O2)ガスの物理的性質は、大陽日酸株式会社様のウエブサイトより「酸素O2*1」をご参照ください。
*1 大陽日酸株式会社「酸素ガスの物理的性質」 https://www.tn-sanso.co.jp/jp/business/product/o2.html
酸素と空気(大気)
さて、 「私たちに周りに存在している空気(大気)!ないと生命活動が危険だよね」 という方。
「空気(大気)」 と <「酸素」 は異なります、英語にしてみると解りやすいですね。
空気 = Air
大気 = Air、atmosphere
酸素 = Oxygen
酸素は、周りの空気(大気)に含まれています。
空気中に含まれる酸素は、原子1個「O」ではなく、原子が2個の分子「O2」の状態です。
一般的に計測業界では
「酸素を測定する」という場合は、「O2」濃度を測定します。
「空気(品質)を測定する」という場合は、相対湿度、二酸化炭素濃度、酸素濃度など空気全体の品質/成分を測定します。
大気には何が含まれているのか
酸素とともに空気(大気)に含まれている成分は以下になります。
成分名 | 割合 |
窒素(N2) | 78% |
酸素(o2) | 21% |
アルゴン(Ar) | 0.93% |
二酸化炭素(CO2) | 0.03% |
その他 | 0.01%以下 |
大気中には、ウィルスや細菌、PM2.5や黄砂などに代表される微細個体や液体粒子、ガス化しにくい成分が含まれておりそれらを「エアロゾル」と呼びます。健康に対する影響が懸念される物質は、環境省より環境基準「大気汚染に係る環境基準*2」が設けられています。
露点測定においては、水蒸気を除いた大気は 「乾燥空気」 として扱われます。
*2 環境省「大気汚染に係る環境基準」 https://www.env.go.jp/kijun/taiki.html
酸素測定の重要性
酸素測定の場面は、主に 「生物の呼吸監視」 および 「酸化(燃焼)活動の監視」 です。
●生物の呼吸監視
生物の生命活動に呼吸は重要な役割を持つことは多くの人の共通の認識であり、人工呼吸器のモニターに酸素濃度が表示されているのは想像に容易いと思います。最近では、競走馬の高地トレーニングシステムが開発されるなど酸素測定の用途は広がっています。医療用(人、動物)からトレーニング、趣味用途まで多様な場面で酸素濃度の監視を行っています。
例)
人工呼吸器、酸素濃縮供給装置、ペット用酸素ハウス、ペット用在宅酸素供給装置、水槽内の酸素濃度、低酸素(高地環境)トレーニング室、競走馬用低酸素トレーニングシステム、酸素缶製造、医療用/ダイビング用の酸素ボンベ製造(保管)
●酸化(燃焼)活動の監視
身近なところで車やバイクのガソリンの燃焼活動をはじめ、工業分野では水素やアセチレンと組み合わせた酸素アセチレン炎として金属の溶接切断用途や、工業熱処理プロセス(酸化防止)、工業炉の燃焼工程(燃焼効率や酸化還元プロセス)など酸素の酸化(燃焼)現象を監視しています。
酸素の燃焼活動を正しく監視および管理することで、車の燃費向上や排ガス量の削減、不純物の除去、酸化防止から火災および爆発事故の防止などに役立てています。
酸素の危険性
「酸素」というとあまり危険性を感じないかもしれませんが、「活発な元素であり、多くの元素と化合して酸化(燃焼)するという特長のとおり、可燃性ガスとの結合、急激な酸素の供給や高酸素濃度状態は極めて危険です。酸素濃度を正確に把握し管理することは、産業事故(労働災害)の発生防止に繋がります。
消防士の火災活動現場での葛藤を描いた映画「バックドラフト」(1991年公開)でも有名な「バックドラフト現象*3」は、空気不足で火災現象が抑制された室内に新鮮な空気が入ることで、熱された一酸化炭素と酸素が結合し二酸化炭素への化学反応が急激起きたことで発生する現象で、映画内でも重要なキーワードであるようにとても危険な現象です。
酸素と燃焼の関係性および火災については、消防庁消防大学校消防研究センターのサイト*4で解りやすく解説されています。
*3 消防庁消防大学校消防研究センター「バックドラフト」と「フラッシュオーバー」の違い」 http://nrifd.fdma.go.jp/public_info/faq/back_draft_flash_over/index.html
*4 消防庁消防大学校消防研究センター「Q&R」 http://nrifd.fdma.go.jp/public_info/faq/index.html
酸素計の種類
酸素計は大きく、3種類に分けられます。
機器名称 | 用途 | その他の呼称 |
酸素濃度計 |
気体に含まれる酸素濃度を測定する装置 *酸素ガスの純度を測定(分析)する装置も酸素濃度計(酸素純度計)と呼ばれます。 |
酸素計 酸素濃度計 工業用酸素濃度計 酸素分析計/酸素分析器 酸素測定器 酸素純度計 |
溶存酸素計 | 液中に溶け込んだ酸素濃度を測定する装置 | |
パルスオキシメーター | 血中に溶けた酸素濃度(動脈血酸素飽和度)を測定する装置 |
血中酸素濃度計 血中酸素計 血中酸素分析計 血中酸素測定器 |
ミッシェルジャパン株式会社では、空気やガス中に含まれる酸素を測定するための、工業用途向けの酸素濃度計を取り扱っています。ミッシェルジャパン株式会社では、溶存酸素計およびパルスオキシメーターのお取り扱いはございません。
工業用酸素濃度計について知りたい方は、こちらの記事も併せてご拝読ください。
工業用酸素計とは。酸素計の種類と特長を解説Application Note: MIL21-04*5
代表的な酸素の測定原理
現在、市場にある酸素計の分析手法は大まかに6種類に分類することができます。
それぞれの測定原理には長所と短所があるので、アプリケーションや測定環境、測定対象ガス(サンプルガス)に合わせて適切な酸素濃度計を選択することが大切です。
測定原理
① ジルコニア(濃淡電池)式
② 電気化学(ガルバニ電池)式
③ 磁気式
④ 光学式
⑤ レーザー分光式
⑥ 黄燐発光式
ジルコニア式
酸化ジルコニウムセンサーは、固体電気化学セルの原理に基づいています。イットリア安定化酸化ジルコニウム層は、通常+600°C~+700°Cに加熱されると酸素イオンが高濃度から低濃度に流れる固体電解質(イオン導電性固体)の性質を持ちます。イオンが位相間を移動すると、内外電極間に酸素濃度比による起電力が発生し、酸素濃度を決定します。
■ジルコニア式酸素計 取り扱いメーカー
Michell Instruments社 … XZRシリーズ
Ntron社 … SenzTXシリーズ
SST Senssing社 … Oxy-Flexシリーズ ※旧製品名:XZR200
Setnag社 … JC-24Vシリーズ
ジルコニア式酸素濃度の詳しい測定原理は、こちらの記事をご参照ください。
技術サポート ジルコニア式 酸素濃度計の測定原理
電気化学(ガルバニ電池)式
溶存酸素濃度計の一種(電気化学分析法)で、二つの電極の材質がカソード側に銀(Ag)及びアノード側に鉛(Pb)の組み合わせで、電解液に水酸化カリウム(KOH)を用いると電池が作り出され、酸素量に応じた電流が流れます。
■ジルコニア式酸素計 取り扱いメーカー
AII社 … GPRシリーズ
Ntron社 … SenzTXシリーズ
電気化学(ガルバニ電池)式酸素濃度の詳しい測定原理は、こちらの記事をご参照ください。
技術サポート 電気化学(ガルバニ電池)式 酸素濃度計の測定原理
磁気式
酸素計のシェア1/3を占める測定原理です。
酸素分子の磁性体(常磁性)を利用した原理で、磁気式は共通して磁界内で常磁性の高い酸素分子が磁化した時に生じた動き(引力)を利用して、酸素濃度を測定します。磁気式は、窒素などの磁化率の低いガスの干渉を受けにくいという特長があります。主に3種類の方式に別けられます。
■磁気式 取り扱いメーカー
Michell Instruments社 … XTPシリーズ
磁気式酸素濃度の詳しい測定原理は、こちらの記事をご参照ください。
光学式
光学式は、酸素分子と有機金属化合物間の発光と消光現象に基づいています。
物質(有金属化合物)には、エネルギー変化(吸収放出)に応じて、そのエネルギーを光で放出する特性を持つものがあり、一般的に発光/蛍光体と呼ばれます。このような蛍光体と酸素分子による発光は、金属から配位子への電化移動によって発生します。光学フィルターに、青色LEDを照射して分子を発光させ、フォトダイオードで発光の減衰率を検出し酸素濃度を測定します。
■光学式 取り扱いメーカー
SST Senssing社 … Luminoxシリーズ
光学式酸素濃度の詳しい測定原理は、こちらの記事をご参照ください。
技術サポート 光学式(LuminOxシリーズ) 酸素濃度計の測定原理
レーザー分光式
レーザー分光式は、吸収分光式、近赤外波長可変半導体レーザー(TDL)式、半導体レーザー分光方式とも呼ばれます。酸素測定だけではなく、ガス分析や水分測定にも利用されている方式です。
■レーザー分光式 取り扱いメーカー
レーザー分光式のお取り扱いはございません。
黄燐発光式
燐は、常温大気圧下で平衡すると蒸気(黄燐蒸気)を放出します。この蒸気は、酸素と反応して発光して三酸化燐になります。この過程で放出される光エネルギー(発光)の量(光量)を測定して酸素濃度を測ります。
現在は、黄燐の危険性からの作業員保護のため先進国では使用されていません。
■黄燐発光式 取り扱いメーカー
黄燐発光式のお取り扱いはございません。
取り扱い酸素計のご紹介
ミッシェルジャパン株式会社では、michell Instruments社、AII社、Ntron社、SST Sennsing社、Setnag社の酸素計をお取り扱いしております。
労働災害や重大事故の防止、製品の品質を維持、システムの保護を確実に行うためにはアプリケーションに適した酸素濃度計を選択することが大切です。機器の選定に不安がある、既設の酸素濃度測定に不安があるまたは追加での取付を希望しているなど、疑問がありましたら、お気軽にご連絡ください。また、酸素測定を始めたいが、何をしていいか全くわからないなど、ゼロからのご相談でも大丈夫です。
お取り扱い酸素濃度計 製品一覧
https://processsensing.co.jp/wp_pst/category/oxygen_meter/
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本記事のアプリケーションノートを公開しています。
下記、リンクよりダウンロード可能です。
Michell instruments社(イギリス)およびお取り扱い水分計は、下記URLをご覧ください。
Application Note: |
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アプリケーションノートはございません。 | |
ミッシェル社紹介ページ | https://processsensing.co.jp/wp_pst/about-us/michell-instruments/ |
テクノロジー紹介 | https://processsensing.co.jp/wp_pst/support/technology/ |
露点測定のよくある質問 | https://processsensing.co.jp/wp_pst/support/faq/ |
お問い合わせ窓口
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窓口 | ミッシェルジャパン株式会社 モイスチャー事業部 |
メールアドレス | info@michelljp.lifcomweb.com |