酸素濃度測定
ジルコニア式酸素濃度測定とは – 第2回, PST22-04
目次
●酸素計の測定原理の基本
●SST社 ジルコニア式酸素計
●酸化ジルコニウム(ZrO2)
●センサーセルの構造
●ポンピング・プレート
●センシング・プレート
●測定
●アプリケーションノートを入手する
●お問い合わせ窓口
ジルコニア式酸素濃度測定とは-第2回, PST22-04
酸素計の測定原理の基本
「酸素(濃度)」を測定する
では、どんな酸素濃度計を選択したら良いでしょうか?
驚くほどに測定レンジが広く、とてつもなく高精度で、並外れた応答速度を持っていて、表示分解能も低く、物凄く多機能で、びっくりするほど不具合が発生しない、そのような素晴らしい酸素計であっても測定環境に適していなければ、正確で安全な酸素測定は実現できません。
サンプリングシステムを完璧に仕上げ、モニタリング体制も万全に構築し、良い製品を導入しても、測定環境に適していない測定原理を用いている酸素計を取り付けてしまえば台無しです。
酸素測定に限ったことではありませんが、測定環境(アプリケーション要件)に適した測定器を選択することが、安全かつ正確な測定を実現することにとって重要です。
酸素計を選定するにあたり「測定原理」は、重要な選択項目の一つです。
第1回では、酸素濃度計の代表定期な測定原理の一つである「ジルコニア式酸素測定」の測定原理の背景についてお話ししましたが、いかがだったでしょうか?
今回は、SST Sensing社が設計開発しているジルコニア酸素センサーについてご紹介いたします。
SST社 ジルコニア式酸素計
本記事では、SST Senssing社の二酸化ジルコニウム酸素センサー(ジルコニア式酸素センサー)を軸としてご説明します。
以下の点にご注意ください。
酸化ジルコニウム(ZrO2)酸素センサーの特長
SST社のジルコニア式酸素センサーは「酸素濃度%」ではなく、「ガスまたは混合ガス中の酸素の 分圧」を測定します。
SST社のジルコニア式酸素センサーはリファレンスガスを用意する必要がありません。
酸化ジルコニウム(ZrO2)
高温(> 650°C)では、安定化された酸化ジルコニウム(ZrO2)は2つのメカニズムを示します。
酸化ジルコニウムは、酸素分子を解離させてイオン化させる電解質の特性があります。 円板状の酸化ジルコニウムには、ポーラス状の薄膜電極が塗布されており、一定の直流電流を流すことで大気中の酸素イオンを透過させます。 ファラデーの電気分解の法則より各電極で発生した物質の量は、流れた電荷に比例するため以下の式が成り立ちます。
酸化ジルコニウムは電解質のようにふるまうため、もし異なる酸素分圧が存在した場合、ネルンストの式より電圧が発生します。 この電圧は、異なる二つのイオン濃度の自然対数比と比例関係にあります。
いずれかの法則は、さまざまな酸素濃度計に採用されているテクノロジーですが、SST社ではその両方を活用しています。 それにより密閉されたリファレンスガスの必要性がなくなり、幅広いアプリケーションに対応可能となりました。
センサーセルの構造
センサーセルは、薄膜の白金層が塗布された四角形の酸化ジルコニウム2枚から成り立っており、中心に白金電極があります。 白金電極は、酸素が解離して酸素イオンが酸化ジルコニウムを出入り出来るよう触媒の役割をします。
上記のセンサーセルのコア部は、ハーメチックシールされてセンサーチャンバーとなります。 酸化ジルコニウムの外側それぞれに白金リングが取り付けられ、中心の白金リングと対になるとこでセンサーセルの電気接続口となります。
更にその外側に酸化アルミニウム(Al2O3)のディスクが取り付けられ、これが大気中のパーティクルや燃焼されなかったガスからセンサーコア部を守ります。
センサーセルの周りには、700℃まで加熱出来るようヒーターコイルが配置されます。 このセルとヒーターコイルの外周にポーラス状のステンレス鋼のキャップが取り付けられて、更に大きなパーティクルやダスト等から内側を守ります。
ポンピング・プレート
最初の酸化ジルコニウムのプレートは、電気化学式の酸素ポンプの役割をします。 ハーメチックシールされたチャンバー内を減圧・再加圧します。 DC電流の向きによって、酸素イオンが電極間を移動します。 このポンピングによりチャンバー内の酸素濃度(酸素分圧)が変化します。
このポンピング動作は、チャンバー内の酸素分圧が大気中の酸素分圧よりも低くなるよう制御されています。
センシング・プレート
650℃以上に加熱された環境では第二の酸化ジルコニウムにおける酸素分圧の違いがネルンスト電圧を発生させます。 この電圧は、酸素分圧に対数比例した比率となります。 チャンバー内の酸素分圧は、常に外界の酸素分圧より低いため、SENSE-COM間の電圧は、常にポジティブになります。
この電圧は、二つのリファレンス電圧(図4-1におけるV1とV5)と比較測定され、いずれかのリファレンス電圧に到達すると逆電圧に転換します。 酸素分圧(ppO2)が高いと、ポンプに逆電圧がかかるのに時間を要し、酸素分圧が低いと短い時間で転換します。 これは、酸素分圧と同じ比率の酸素イオンをポンピングするのに余分に時間を要するためです。
測定
SSTの酸素濃度計には、5つの接続があります。
ヒーター用接続×2:セルの動作温度をきちんと確保するために正確な電圧が要求されます。
セル用接続×4:電気化学式ポンプ駆動のためPUMP-COM間に可逆的定格DC電圧をかけます。 結果として出力されるネルンスト電圧は、SENSE-COM間で測定します。
測定信号が既定のリファレンス電圧の振幅幅に到達すると、定格電流が反転します。 このポンプの減・加圧の総サイクル時間は、測定するガスの酸素分圧によって変化します。 このサイクル時間は、ネルンスト電圧のサイクル時間と同じです。 雰囲気中の酸素濃度が高ければ、リファレンス電圧に到達する時間が長くなります。 つまりネルンスト電圧のサイクル時間とは酸素分圧に直線的な比例関係にあります。
ご利用にあたっての考慮
理論上、V1とV5は任意に設定出来ます。以下の点への考慮が必要となります。
① 酸化ジルコニウムの電気二重層の影響の排除
② アプリケーションに最適な応答時間
③ 温度依存の軽減
こちらの内容については、「第3回 ジルコニア酸素センサーからの出力」でご説明いたします。
アプリケーションノートを入手する
下記、リンクよりダウンロード可能です。
Application Note: PST22-04 ジルコニア式酸素濃度測定とは
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